ナミダ列車









そうだ。

日光は私に取って特別な場所だった。






家族との思い出が詰まった場所。私の大事な思いが詰まった場所だ。




世の中には、 何するために電車に乗っているんだっけ…って思いながら会社に向かうサラリーマンだとか、そうやって毎日を過ごしている人はたくさんいる。

そんな中でもこういう思いのつまった場所はちゃんと存在している。それを今、確かめられた。




「私は、初心にかえりたかったのかもしれません」

「初心?」

「最近、日々にマンネリとしてて…ちゃんと生きている実感が沸いてなかったんです」

「…」

「日光に行ったら何か変わるかもしれない。見つかるかもしれないって…、多分、私は突発的にそう思った…。ありがとうございます。大事なことを思い出させていただいて」

「いや…僕は…」





"旅"は自分を見つめ直す機会をくれる。

ちょっとした非日常は日常を見つめ直す機会を。


見知らぬ場所だからこそ見えるもの、気づきの機会を与えてくれる。





「ああ…たくさん写真撮ってみせてあげなきゃなあ」

「写真…?」

「はい。親に…見せたくて。…って、あ、一つまた思い出しました。"きっかけ"ってやつを」