ナミダ列車









不思議だ。この電車はいろんなことを思い出させてくれる。それはきっと私にとってすごく大事なことで。



────私の、親は、




「私の親は共働きだったんです」

「…」

「あ、別に嫌な意味はないですよ…?平日は時間が取れない分、休みの日くらいは私との時間を目一杯取ろう、とあたたかい配慮をしてくれてたこと、分かってましたから」




私の家系はそんなに裕福なものではなかった。

母は遅くまでパートをしてくれていたし、父は小料理屋を営んでいたけれどそれほど客足は多くなく。

汗水垂らして私のために必死に働いてくれていたことだって、分かっていた。

私が不自由しないようにと、自分のことは二の次に働いて働いて働いて…その上せっかくの休みなのに身体を休ませることなく私を日光へ連れていってくれた。




寂しい思いをしているだろう。
子どもには愛情をたくさん注いであげたい。

私の手を引っ張って、微笑んでくれる母と父。太陽の日差しがあまりに眩しくて、その輪郭は不鮮明に───映る。

そしてその先に広がる神秘的な空間に、母も父も笑顔になった。疲れが吹っ飛んだという。


大好きな日光を見れば、彼らは笑ってくれたから。