「えへへ、ありがとう、ございます」
「でもー、イチゴオレ好きでストロー噛むだなんて、中身だけはウンとお子ちゃまだけどなー」
「…っ、ちょっと!なんなんですかあなたは。さっきから余計な口を挟まないでください!」
のんべんくらりとした発言はハルナさんからのものだった。
再び頬杖をついて紙パックを眺めている彼は、「ほーん」とそれとなくひとりごちて欠伸をする。
「ハハ、やはり僕には仲睦まじく見えるよ」
「ああ…もう無視しましょう。無視」
「はは、それはちょっと可哀想だよ」
「そうですか?」
「うん。存在を認識されないことは、…すごく悲しいことだからね。近寄りたいと思っている相手なら、尚更ね」
これが、経験は語るっていうものなのかもしれない。
そろりと視線を下げるおじさんは、何かを思い出しているように寂しげに笑っていた。
ハルナさんは頬杖をついたまま窓の外を眺めている。
「……で、そうそう、日光といえば杉並木もおすすめだよ」
