なにが起こるか分かっている日々なんて、そんなのは本当の人生とはいわないのだ。
待っているのはひどい虚無感だけだ。
"生きながら"生きるには、一歩を踏み出さなくてはならない。
────なにが起こるか分からない。それが人生なのである。
「俺はもう走れない。だけど、その想いを伝えることはできる。今までとは違う形だとしても、目標は同じなんだ。俺のやり方で、夢だったインターハイに挑戦したい」
ヘラヘラしていた"ハルナさん"はどこへやら。ヨータはやっぱりヨータだった。
そして3年前の願い事はとっくに叶ってたんだって思ったら、際限なく涙腺が緩んでしまう。
「私も、プロの絵描きになる。まずは専門学校に通うよ。それと私自身ももっともっと強くなって、たくさんの人に勇気を与えたい」
「なれるよ、いろはなら」
「ねえ、3年前、俺になにを拝んだかって聞いてきたの、覚えてる?」
「…東照宮の?」
「うん。実をいうとさ、その内容、別に神様に願うまでもないものだったんだ」
