「……私も、そう思ってもいいのかな」
「……うん」
「資格なんてないのかもしれないけど、……今度こそ思いたいよっ」
「そんなことない」
「……私も、ヨータと一緒に地に足を踏みしめたい。現実は現実。変わることなんてないん、だよね。私は受け入れなきゃならない。強くならなきゃいけない……」
「……うん」
「そうすることをヨータに対する贖罪にする。もう逃げないよ。逃げたくない。時間を無駄にしない。こんなのもう懲り懲りだ…….っ」
「いてくれるだけで、俺は嬉しいんだよ」
似合わない丸眼鏡はカモフラージュのつもりか。それを外したヨータは昔のような屈託のない笑みを私に向けてくれた。
「……っ……ヨータっ……」
それでもやっぱり悲しい。
辛い。痛い。
だからといってずっと一緒にいられるわけじゃないんだ。あまりに遅すぎた。あまりに時が経ちすぎた。
罪はそれほどに大きいものだとも分かってる。
もし、神様とやらが本当にいるのなら、手足がなくなってもいい、目が見えなくなってもいい、呼吸もろくにできなくなってもいいから、
────どんな罰でも受けるから、どうか彼を救ってはくれないだろうか。
"ごめんなさいっ……"
……ああ、これは私の心の声だった。
私は何度も謝っていた。暗い暗い光がささない真っ暗な部屋で、私はなにかに必死に謝っていた。
──病室。
──ベッドの脇。
──点滴。
不意に、ヨータの痛切な表情が脳裏にチラついた。今に泣いてしまいそうに、私に話しかけるあなたが……。
「二人で乗っているから、大丈夫、だよね」
「……っ、…え?」
「実はさ、もう一つ乗ってるんだ」
………しかし人生とは、なにが起こるか分からないものだ。
「……行き先の分からない電車に」
──日常の中で非日常に遭遇する。未知なるものに出会い……だからこそ、新しい気づきを得る。
そうやって人は成長し、人を人たらしめ、なによりも自分の色を濃くしてくれる。
それは私がこの"旅"で理解したこと。
それ全てが人生。人が生きてゆくということ。
「勇気をもらった。ありがとう」
「……え?」
「俺、さ。明後日、大きな手術をすることになったんだ」
そうやって人は、強くなるのだ。
