イチゴオレをシゲシゲと眺めていたのも。
奥日光のワードで一瞬だけ哀しそうな顔をしていたのも。
"ハルナさん"はヨータだったから。
当初のおちゃらけた雰囲気は初見でも接しやすい人間だと思わせるため。
最初はただの陽気な同乗者として近づこうとしてたのかもしれないけれど、それでも彼は貫けなかった。
アーモンドチョコを食べさせた時、特に意識することなく、私が彼にツッコミを入れてしまったこと。
あれは確か、3年前にもあったから──。
きっと、重なった。
思い出のあの日と。
怖がらずに前に進んでほしいと言ったのも、記憶を封じ込めて逃げていた私のためだった。
電車に乗っている時間を自分にちょうだいと言ってきたのも、全部私のため。
────現に逃げたって、なにも残らなかった。辛い現実に蓋をしたら綺麗さっぱり気分爽快?
……そんなことはなかった。
感じていたのは一種の虚無感だけだ。
待っていたのはなんの変哲もない日々。中身のない日常。その繰り返し。空っぽ。何にもない。
生きているのか死んでいるのかも分からず、ただ呼吸をしているだけだ。
それに嫌気がさしたから"旅"をしたいと思ったんだ。漠然と日光に行きたいと思ったのも全部そう。
なにも良いことなんてなかった。逃げた先で得られるものなどなにもなかった。
……なんにも、なかったよ。
「ふぅっ………ヨータ、は、言った、よね…っ」
「……え?」
「っ……、目的地の、ない電車。不確証で、リスキーで、怖くてしょうがないはずのそれに……っ…どうして、乗ることができるのかって……っ」
怖い。
震える。
あなたの命の火が今に消えかけている事実は、どうやったって変わらないのだと突きつけられる。
──日が暮れる寸前まで追いかけっこをした。
──変なことをしている、といじめられていた私を助けてくれた。
──県大会、ゴールテープを切る姿はキラッキラに輝いていた。
──どんどん魅力的になってゆくあなたを見て、少しでもトクベツな存在であれたらと思った。
こういう時ばかり、昔の懐かしい記憶が頭を過るんだ。
口を結んで、嗚咽して泣きむせぶのを必死に堪えるのがやっとだった。
じゃなきゃまた、私の口から出てくるのは弱音ばかりになってしまう。
これ以上ヨータを悲しませたくない。これ以上ヨータにこんな顔をしてほしく……ない。
────痛くも痒くもない自己防衛ガードを張った日常からなんて、得られるものはなにもない。
だから一歩踏み出すことが求められるんだ。
知りたくないこと、見たことないもの、やったことがないこと、それらを受け入れるのは怖い。
けれど、
