「余命3年」
「…い、や」
「これが俺に残された時間なんだ」
「…っ」
「どうしたって変わらない。変えることはできない。残り短い命だからこそ、俺は、君と…」
「…いやだ」
「俺は、いろはのことが———」
頭が真っ白になった。
私は自分の身を守りたいばかりに、一番大切な人を傷つけてしまった。
受け入れたくない。
なかったことにしたい。
できるなら、綺麗さっぱりリセットしたい。
今日この日がすごく楽しみだったの。
ヨータの特別になりたい。もっともっと近くで彼を支えてあげたい。いつのまにか幼馴染としてではなく、好きな人として見ていた。
告白して、彼氏彼女になって、ともに夢を追いかけられたらどんなに楽しいだろうって。
いやだよ。
いやだよ。
…たった3年しか生きられないだなんて、そんなこと言わないで。
この先も彼とずっと一緒に…。
一緒に…。
———私は酷いことをした。
あまりに辛い現実から逃避してしまった。
6月に日光に訪れたことも。
美術展で受賞したことも。
彼の影響が如実に現れ出ている絵のことも。
絵やヨータと結びつきが強かった人たちのことも、全部。
「君のことが、す――」
「あの、」
まっさらに。
「私、あなたと面識ありましたっけ…?」
私の核となる記憶の一切に蓋をして、胸の奥に追いやった。
