「いろはの絵を見た瞬間、内からググッとなにかが湧き出してきた」
「……ヨータ?」
「いろはが俺を走らせてくれた。また夢を見させてくれたんだ」
「……」
「嬉しかった。そして理解した。ああ、俺はこんなに陸上が好きだったんだって。走っている時の俺は、いろはの目にはこんなに楽しそうに映っているのかって。俺はやりたいことを十分全うできていたのかもしれないって」
「……」
「それは消えないし変わらないこと。本当に俺は、救われた」
ベンチに座っているヨータは、ふと青空を見上げていた。そこに手を伸ばし、太陽を手のひらで隠して雲を見る。
雲は止まっているように見えて実際は絶え間なく流れている。時間だってそう。止まることなど決してないのだ。
