「ヨータはなに拝んだの?」
しっかし、あの鳴竜の存在感はすごかったなあ…。
外国人観光客なんて、「イッツクール!」って目を輝かせていたし。ああいうのがツボにハマるからこそ、日光は今もこうやって国際的にも大人気な都市になってるんだ。
一通り参拝を済ませた私とヨータは二人並んで参道を引き返す。
「それ言ったら御利益がなくなる」
「ああ、そっか」
「そーです。だからいろはのご想像にお任せします」
「…ま、まさか」
「…ん?」
「エ、エッチなお願いごとじゃ…」
「………それはない」
で、ですよね。
最後ものすごい冷たい目を向けられた気がする。
スタスタと歩き始めてしまった彼の背中をぼーっと眺めて口を結んだ。
私はね。私は…、
ヨータがいつか、昔みたいに大きな夢を抱いて、それをイキイキと追いかける…。
そんな姿が、また見れますようにってお願いしたよ。
ザァア…。囲むように生い茂っている杉の木が音を立てて揺れる。
"走る"ことはもう叶わなくなってしまったけれど、それでもヨータにはまた別のなにかを見つけて、幸せを感じてほしいんだ。
私は幾らでも支える。何年何十年って、一緒に頑張ってゆきたいと思うんだよ。
