私はヨータを、栃木県の観光名所である日光に誘った。
「そこに行って、伝えたいことがあるんだ」
と、付け足して。
あまりに唐突に誘うもんだから彼は一度キョトンとしていたけれど、すぐに二つ返事で了承してくれた。
「俺もいろはに言わなくちゃいけないことがある」
友達の恋バナの聞きすぎか、または少女漫画の読みすぎかもしれない。不覚にもドキッとした。
「往生際が悪いな、俺って」
「……え?」
「やっぱり、誰にも渡せない」
「……ヨータ?」
「……分かってた、けど…」
ヨータがほんの僅かに声を震わせていたことに私は気づかなかった。
掠れた声はきっと、なにかと葛藤していた。
自然な流れで頬に手を添えてくるヨータ。
よくヨータは私に触れてくるようになった。まるで肌の感触を確かめるように。私という存在をその手で確かめるように。
「どうしても、聞いてほしい」
けれど、その場にいてもたってもいられなくなって駆け出した。
まさか、幼馴染に告白する時が来ようとは思ってもみなかったんだ。
絵以外に熱くなったのはある意味これがはじめてのこと。その日は邪念を払うかのようにキャンバスに向き合ったものだ。
───そして、いつからかヨータは、放課後にグラウンドを眺めることもしなくなった。
あんなに好きな陸上だったのだから、もちろん嫌いになったわけじゃないってことは私が一番理解していた。
それ以上に、他にやるべきことがあったのかもしれない。
美術室に向かう私に「頑張って」と笑顔で背中を押すとスタスタと帰路についてしまう姿を見て、漠然と思った。
