「いろは。結構似てない?」
「私?」
「俺、絵心あるのかもしれない」
「ないでしょ。なにこのへろへろした絵、逆から見たらハゲたおっさんの絵にしか見えないんですけど」
「おっさん…?あ、確かに。いろは髪短いからいい具合にトリックアートになったみたい」
ハハハ、と陽気に笑うヨータ。
去年の悲し気な彼はもうどこにもいなかった。
彼は私に「勇気をもらった」「夢をもう一度見させてくれてありがとう」と何度も笑顔で伝えてくれたんだ。
だから、私は知らなかったし、疑いもしなかった。
なんでヨータが急に学校を休んだのか。
そもそもなんで走れなくなったのか。
しつこく聞かなかったのは、この和やかな生活がずっと続くのなら別に他はなんだっていいし、なにも知らなくてもいいと思ったから。
これまで私がぶつかってきた困難なんて、ヨータに比べたらたかが知れてた。
————私はひどく脆く、弱い人間だったんだ。
