ナミダ列車








そして8月、【内閣総理大臣賞】をとった私の作品を見て泣いていたのもヨータだった。

先生も私の隣で肩を震わせて泣いていた。



「いい絵を描いてもらったねえ…」と、膝から崩れ落ち、むせび泣くヨータの背中を優しく撫でながら。

彼はそれから何度も"ありがとう"と言ってきた。

"ありがとう"



"ありがとう"





ヨータにはこの絵がどう映ったんだろうか。





私は彼の役に立てたんだ。私の絵をもって、人を鼓舞することができた。

明日からまた頑張ろうって、強く生きようと思えるような作品が、やっとこの時に描けるようになった。

その時はじめて夢を叶えることができたんだ。







………



「やっば………」




それから、高校3年生の4月に入り、私は始業式早々遅刻した。

本当に最悪だ。いつも一緒に登校しているはずのヨータがどういうわけか、家のチャイムを鳴らしてこなかったんだ。

つまり、ヨータが私の目覚まし係だったのに、それがないせいで私は寝坊してしまった、というなんとも身勝手な出来事。



なんで起こしてくれなかったの。

後で文句言ってやる、なんて思ったけど、その日、実はヨータは登校していなかった。





「ねえ、学校休んでた、なんて知らなかったんだけど」

だから、本人に直接文句を言いに行った。

ヨータの家。そこにはもちろん彼がいた。ていうかむしろ本人が玄関に出迎えにきたくらいだし。

いまだに終わりきってない春休みの課題を片付けに行くついでにって立ち寄ってみたけれど、まさか本当に家にいるだなんてちょっとビックリした。







「ごめんって、おかげで遅刻したんだもんな」

「そうだよー、てか、普通に家にいるし!」

「ちょっとね、俺もいろいろあんのよ」

「なんだそりゃ」


課題はいっこうに終わらなかった。

そればかりか私は手帳を開いて、今後の予定や楽しいイベントを眺めて浮足たたせる。




「…って、あ!なに描いてんの!」

けれど、隙を見るようにニュッと出てきた手を見逃さなかった。


こんがりと焼けていたかつての小麦色のそれではなく、真っ白で細い手首。

ヨータは私の手帳の端っこに変な落書きをしてきたんだ。