ナミダ列車








そんな淡い恋心はあえて伝えなかった。

それ以上に、お互いに部活に熱を注いでいたし、なによりもまず彼に見合うような女の子になりたいって気持ちの方が強かったんだ。


はやく立派な絵が描けるようにならなきゃ。県でも有数の短距離選手であるヨータに追いつくために必死で。






────そしてそのまま高校生に。

私とヨータは高校も同じところに入学することができた。成績はギリッギリ。内心かなり喜んだものだ。

そんな高校2年生の4月半ばのこと。







「俺、もう走れなくなっちゃったんだよね」


幼馴染のヨータの突然の告白が、私に大きな衝撃を与えた。








美術展の出品締め切りがあと2か月を切ったってところでのこと。

私はもちろん美術部に入部して、もっと大規模のコンクールに出展することで実力をつけようと思っていた。

そんな時、彼の口から予想もしていない台詞が飛び出してきて言葉を失ってしまった。







理由は分からない。

彼が嘘を言っているようにも見えなかった。





「走れないんだって、さ」

「…え?」

「もう、走れないんだよ」

「…ヨータ、」

「ハハ、なんか呆気ないよな」




へらりとしているけれど、内心は相当キツイんだろう。



ちいさい頃は追いかけっこに付き合わされた。小学生の時は徒競走なんてぶっちぎりで速かった。中高と陸上部で活躍をしていたヨータは、壇上に立っている時、本当にイキイキとしていたんだ。

一度だけ見た県大会でのワンシーンが思い出されて私が泣いてしまいそうだった。キラキラしてた。カッコよかった。

……ヨータはもう、走れないの…?









夢の舞台インターハイ出場はもう叶わない。

彼にかけてあげる言葉は見つからなかった。







放課後、グラウンドに向かうと陸上部のランニング風景に彼は混ざってはいなかった。


彼は、4月の半ばを境に陸上部を辞めた。




昇降口付近で遠巻きにしているだけの姿は痛々しかった。

切なげに背を向けて歩く彼になにかあげられないだろうか…、そう思わずにいられなかった私は、美術展に出品する作品を急遽変更することを決めたんだ。