さらに学年が上がると、クラスメートの子たちの目が肥えてくる。
他者よりも自分が優れているのだと、さまざまな面で優劣をつけたがる時期。
「また描いてるの〜?」
絵がうまくなりたいと思っていても、頭の中でイメージしたとおりの作品が描けなくて、当時の私はかなり気を落としていた。
「じょうずじゃな~い」
「いろはちゃん変なの~」
「こんなの描いてなにが楽しいのぉ?ただの紙じゃん。紙」
それは 奇妙なものを見るような目だった。
口角をあげ、私が描いていた絵を取り上げる彼女たちに「やめて」と身を乗り出すが、小馬鹿にしたまま返してはくれなかった。
今思えば軽いいじめ。
ただ両親のために頑張っていることなのに、どうしてこんなに非難されなきゃいけないんだろう、とも思って。
「あははっ!いろはちゃんおっかし~」
悔しかった。
私の気持ちなんて知りもしないくせに。
それに なにか彼女たちに迷惑をかけたかな?って…とうとう泣きそうになった。溜まっていたものが一気にはち切れる寸前だったのだ。
「おい」
その時だ。教室に彼──ヨータが割り入ってきた。
「必死になることの何がおかしいんだ」
「ヨ、ヨータくん…!」
「毎日をなんとなく過ごしているヤツよりずっといい」
「…っ」
「人のためになろうと努力してる人間を笑うだなんて、最悪だね」
私をかばうように女の子たちとのあいだに立ち入ったヨータは、よくこうやって私をかばってくれたものだ。
「うまいじゃんね?」
女の子たちが逃げるようにして退散した後は決まって絵を褒めてくれた。
彼は、私の背中をいつだって押してくれる優しい優しい王子様だった。
