ナミダ列車










「ユキねぇ、この前パパとママとサイパン行ったのぉ!」

「えぇ〜?サイパンってなぁに〜?」

「海外っていうやつぅ!飛行機びゅ〜んして楽しかったぁ!」

「えええ?!飛行機乗ったのぉ?!ユキちゃんすんごぉい!」



そしてさらに、時は夏休み明けの学校に移る。

始業式が終わって下校の時間になると、クラスのお友だちが集まって話しているのを私は居座るだけ居座ってただ聞いていた。





「いろはちゃんはぁ?」


だから、話題が私に振られるのもよくあることで。




「にっこう!」

「にっこぉ〜?それ何処ぉ?」

「とちぎの北のほうだって!」

「えっ、とちぎけん?なんかつまんな〜い」



自信満々に答えたのに、返ってきたのはショボいと思っていることが丸分かりな反応だった。


何処に行くのかがそんなに大事なのか。訪れた先で何を感じて何を学ぶのか、ということの方が大事なのではないのか。

当時の私はその時からこんなことを考えていた。少しだけムッとしながら、私はランドセルを背負って"バイバイ"をした。







────でも理解しているとおり、家に帰っても父も母もいない。

寂しさがないといえば嘘になるけれど、私は分かっていた。

父も母も私のために汗水垂らして働いてくれていることを知っていたから、へっちゃらだった。








それに、絵の勉強に没頭することを覚えた私はさらに無敵だったのだ。


「だったらさ、にっこうを描けばいいんじゃない?」


この提案をしてくれたのもヨータで。







頑張っている両親のためになにかがしたい。

恩返しがしたい。

せっかくの一人の時間なんだから何かできないかな、と思案していた時に、ヨータはこのアイデアをくれた。

日光の風景を私が描くことで、両親の心が少しでも安らげばいい。旅をしている気分を味わうことで、疲れが癒えればいい。




私の人生と言っても過言ではない絵と、ヨータはそれほどまでに密接だった。