「……うっ…」
ハルナさんの声が何重にも聞こえる。
突如として、酷い頭痛が襲ってきたんだ。
2017年?
なんでハルナさんが?
私はあなたなんて知らない。
こんなの受け入れたくない。こうして突きつけられた真実は、私に牙を向けているようだった。
────そして頭の中をかち割り、濁流のように流れてくるのは、"記憶"だ。どこに隠してあったのだろうというほどに膨大な量の、"記憶"。
"俺を見てっ……"
"ごめん、なさいっ……"
"俺だよっ……"
渦巻く記憶の濁流の中は胸がギュウギュウに潰されてしまうくらいに、ひどく哀しく、切ない。
ああ…ごめんなさい。
一筋の光の線が私の正面へと伸びてくる。先の先へと、光源を掴むようにして手を伸ばした。
「………ヨー、タ…っ……」
同時に浮かび上がる男性像。
その名前をどうして今の今まで一度たりとも口にしなかったのだろう。
────私は、なによりも大切なあの人との記憶を必死に手繰り寄せた。
…………
「ただいまーっ!」
靴を脱ぐ。身体よりも大きいランドセルを背負っている小学校低学年の私は、しばらく玄関に突っ立った。
学校から帰っても"おかえり"と言ってくれる人はいない。
だけど、私は寂しくなかった。
電気一つついていなくたって。
家の中がシン…と静まりかえっていたって。
何処かの家で楽しげにテレビを見ている団欒の声が聞こえてきたって。
平気だった。
「いーろはっ!」
それは、幼馴染のヨータが遊びに来てくれるからだ。
