足元に潜んでいる地雷が思い切り爆発した感覚。
別に泣こうと思っているわけじゃないのに、自然と頬に伝ってゆくのは湿った液体だった。
"ごめんなさいっ…"
"ごめんなさい……"
私はさっきからなにに謝っているのだろう。正体不明の声に、どうしてこんなに哀しくなるのだろう。
中身がなく、なにに対してもやる気が起こらない、まるきり退屈な日常が一体なんであったかが徐々に明らかになっていくのが、ただ怖かった。
──スペーシアだけでなく、変わったボディをした特急列車が停車していたこと。
──ダイヤ改正。
──浅草行きの快速電車が廃止され、南栗橋までの急行電車が代用されていたこと。
通学で毎日東武日光線を使っている私が知らないのは可笑しい。
改札前の掲示板やアナウンス、ニュースなど、ましてやダイヤ改正なんて……目や耳に触れないことはないはずだった。
じゃあ、私は気づかなかったのではなく……もともと知らなかった?
「あの日の東照宮の陽明門はいろはが言ったように確かに大修理中で、豪華絢爛な姿は拝むことができなかった」
やっぱり私をおちょくってるだけ?
大掛かりなドッキリ?
でも、ただ一人、ここに証人がいた。
心拍数が上昇の一途を辿る中で、ハルナさんはこの現実が真の現実であると証明するように口を開く。
「2013年から行われた、6年がかりの大修理は、予定より2年早い2017年3月10日に終了したんだ。よみがえった至宝が一般公開されたことは、ちまたではニュースになった」
「そ、んな」
最初に乗車して来たおじさんと交わした会話を思い出す。
確かに6年かかることは知っていた。
先月の5月に訪れた時は完成の見込みなんてゼロだったはずの陽明門。
これはまだまだ時間がかかると思っていたのに、1ヶ月後の今日には修理が完了しているだなんて、思えば変な話だった。
それがまさか、修理が終わったのは"2017年"の3月だったなんて、
「そんなのは…」
知らなかった。
「いろは、かなり残念がってたよね。陽明門っていったら東照宮の目玉なのにって」
「……な、」
「しょうがないからおとなしく三猿のおみくじを引いたんだけど、末吉でさ、微妙…って嘆いてた」
「……な、んでそれを」
……2017年?
なにがどうなってる?
まさか、タイムスリップだなんて非現実的なことが本当に起こっている?
そうだとすればなんでハルナさんは、当時のことをそんなに詳しく知ってるの?
なんで。
だって、
「単純なことだよ」
その日は────。
「────3年前の今日。俺といろはは、一緒に日光に行ったんだ」
