ナミダ列車









胸騒ぎがする。

ストッパーが外れ、気づかないようにと無意識に蓋をしていたものがジワジワと溢れ出てくる。





「今日…?なにを言っているのか意味が分からな…」


最後に日光に"行った"のが今日?これから行くんじゃなくて?

また突拍子もないことを口にしているのだろうと疑いの目を向けたけれど、ハルナさんは冗談を言っているようには思えなかった。






「ゴールデンウィークなのに観光客が少なかったって、可笑しいと思わない?」

「……違う」

「いろはは、ひと月前の5月に行ったのだと思い込んでいるだけなんだよ」

「…違う…っ!」

「じゃあ確かめてみれば?日光に行った、だなんてその手帳の5月の欄には一言も書いてないはずだから」



────ドクン。ドクン。

こんなの、別に信じる必要もない。聞く耳を貸すようなものでもない。ただ一人確固たる私を信じればいいこと。

それなのに、私の中の私が、手帳を開けと言ってくる。

"開け"



"開け"







ハルナさんは動じることなく私の様子を伺ってくる。

言われるままに、ハゲ頭のおじさんのらくがきがされている4月のページをめくって目を見開いた。

ゴールデンウィークの欄には、宮城県にある父方の祖父母の家に遊びに行ったことが書いてあった。



──……なんで。

私は…ちゃんと5月に……。



私を辛うじて支えていたなにかが崩れ落ちる。足がすくむ。息がままならない。同時に、ひどく哀しい感情に呑まれそうになったのはどうしてだろう。




ハルナさんの言うとおり、この月には日光になんて行っていなかった。