「日光は、すべてのきっかけなんです。オタク知識を披露してしまいましたが、私の源である絵描き。その原点である日光はたくさんの思いれが詰まってる」
「…」
「彼の絵が描けたのも、この電車の終点である日光に起源があると思うと感慨深いです」
ハハ、と笑ってみるけれど、ふと、好きな人だなんて甘酸っぱいレベルではない重い話になってしまったことに気付く。
赤ちゃんもできて、これから幸せな生活が待っている二人の前で、なんて雰囲気を壊すようなことを…。
「って、なんかすいません。もっと楽しい話ができればよかったんですけど…」
こんなのジョシコーセーらしくないよね。
普通だったら恋バナっていうと、キャッキャするものなはずなのに私バージョンではそれがありえなくなってしまう。
確かに、人並みに浮いた気持ちもなかったわけじゃない。
他の子みたいに軽いテンションで話せないのには、それほどまでに真剣に彼のことが好きだったからって理由がちゃんとあるからなんだ。
「ううん…、私こそ、興味本位でいきなり変なこと聞いてごめんね」
「いえ…」
「優しい子なんだね」
