6月のはじめに出品締め切りだというのに、この時期のリスタートは無謀だと言われた。
違うんだ。
私がやりたいことは、私が描いたものを見た人が明日頑張ろうと思えるような、心の支えになれる作品をつくること。
名の知れた美術展で受賞することは、“たくさんの人に”見てもらえる機会が得られる、ただそれに過ぎなかった。
私は、もっと本当の意味で人を鼓舞したい。
人の生きる糧になりたい。
絵をはじめた理由はそれだったのだから。
人生の中でつきものになる挫折の壁。それを乗り越えるために力になりたい。
審査員がどう思うのかなんて関係ない。自分の思いと彼の思いをありったけ、キャンバスにのせたい。
大衆のためよりもまず、なによりも大事な人のための絵描きでありたい。
もっと、もっと近く。
———きっかけはすぐ近くにあったんだ。
