ナミダ列車








緑に囲まれているという点でいうと、地元とあまり変わらないのかもしれないけれど、日光のそれはちょっと違う。

ほら、パワースポットってあるでしょう?

その意味が分かる。言葉では表しきれない美しさ、神秘は、直接的に訴えかけられる絵でなら、伝えられる。




涼しい風が肌に当たる。

草木の匂いも想像できるように。



それはまた、見ている人の心境によって景色はウンと変わるものでもある。どんなシチュエーションで、いつ、誰と、…誰と、訪れて…、







「…おお、ハイキングデートにもいいって書いてある!」

「…え?」


ハッとした。

エリさんは、サトルさんと行くのに最適だという意味で観光マップに反応を示していた。

ただそれだけなのに、なんで今胸がざわついたのか。自分でも分からなかった。






「あのさ、一個質問してもいいかな…?」

私は無意識にこの話題を避けていたのかもしれない。






「ぶっちゃけ、好きな人とかって…いないの?」

定番なのは“彼氏”いないの?その聞き方の方であるような気がする。でもエリさんは、あくまでも"好きな人"を聞いてきた。




居心地の悪い、変な風が胸を撫でてくる。




———私は、1年前、高校2年の頃を思い出していた。