「失礼な…、ていうか、適当なことを言わないでください」
「そっちこそ失礼なー、適当じゃないよーん」
「適当でしょ!もし仮に私が滝よりもお団子に夢中になっているのだとしても、なんであなたがそんなことを知ってるんですかって話です」
「だって俺はいろはのことなら何でも知ってるからねー」
「またその現実みのないことを…」
掴みどころのない雰囲気を引き立てる丸眼鏡を、クイと正すハルナさんはどんだけマイペースなのか。
ポリポリと首をかくその手は伸びきった襟元、そこから垣間見える彼のだらしなさを強調させる。
「いろはは時々、酷なことを言うよね」
ガタンゴトン…。
少しだけ、空気が湿っぽくなったことに私は気づかないふりをした。
エリさんもサトルさんもこの場に配慮してくれたのか、または何かを察してくれたのか、何も聞いてこなかった。
酷、か…。
私には何の行為が酷に値するのかも分からない。釈然としない。
ハルナさんは、誰なのか。
電車に乗り続けている意味、真相。
すぐそこに何かが引っかかっているんだ。
木の枝に風船が引っかかってしまって、ジャンプしても指は空を切る。取れそうで取れない、あの感覚にひどく似ている。
