「私がナンバーワンで行くべきだと思うのは、竜頭ノ滝(りゅうずのたき)です!」
「あ!聞いたことある!」
「それもそのはずです!日本三名瀑のひとつですもん」
「へっえ〜、日光って凄いんだ。栃木も捨てたもんじゃないね…」
ハルナさんからの視線をそのまま放置して、私は日光について熱く語り始める。
思い出の日光。ここに来たから絵を描こうと思った。この場所がなければ絵を描かなかったかもしれない。
────私という人間の発端の地。
大事な人と一緒に訪れた。両親と、それから…。
「魅力まみれですよ!この滝は何がいいって…、男体山の噴火によってできた溶岩の上を210メートルにわたって流れ落ちる迫力ですよね」
「…ほ、ほう」
「幅10メートルほどの階段状の岩場を勢いよく流れる渓流爆。滝つぼ近くが大きな岩によって二分され、その様子が竜の頭に似ていることからこの名がついたともいわれています」
「…す、すごい」
「特に今!5〜6月は赤紫色のトウゴクミツバツツジが咲き誇るおすすめの季節です。また、9月下旬ごろからは紅葉の名所として人気が高くてですね、モミジやシナノキなどに彩られた美しい景観が楽しめます」
「…うんうん」
「私、秋にも行ったことがあるんですけど、観爆台から眺める紅葉に彩られた滝つぼの眺めは最高!さらには、竜頭ノ滝の真ん前にある茶屋で、お団子を食べながら見るのがまた格別なんです!」
「……そう、なんだ」
「風情ありますよね…。水が落ちる音を聞きながら、お茶をする。インスピレーションが沸くといいますか、私はあそこが大好きなんです。それと、なだらかな斜面を流れる竜頭ノ滝を、遊歩道から眺めながらウォーキングするのも…」
「とまんないね」
高速で開閉されていた私の口がピタリと止まった。涼しげな声が、私の勢いを殺すかのごとく、平然と割って入ってきたのだ。
