「ストイックだね」

「へへ、なんでだか頑張れちゃうんですよね」

「うんうん。私もソフトボールやってた時は過酷な練習の日々だったし、楽しいことばかりじゃなかったけれど、3年間みっちり頑張れたなあ」

「素敵です」

「ふふっ、ありがとう。今思うとね、その時が一番自分がキラキラしてた時間だったなって。それくらい、高校時代は忘れられない、かけがえのない時間だった」





過去に思いを馳せているのか、エリさんは懐かしそうに瞳を下げている。





「かけがえのない…」

「そうだよ。宝箱みたいなもの。ハタチ過ぎてみて分かる。あんな高校時代は二度と戻ってはこない」

「……そう、ですよね」

「うん。しかも全力を注いだ時間は、そのまま自分の身の一部になって、大事な核となると思ってるから。だから、私は当時の気持ちをよく噛み締めてるんだ」






エリさんの言葉が妙に胸に刺さった。









「なんだか変な方向に話が向いちゃったね」

「いえ」





絵に向き合ってきたこの人生。それは確かに私を私たらんとする、何よりも大事なものだったはずで。




多くの人に感動を与えたい気持ちはもちろんあったけれど、もっともっと、もっと深くには、どうしようもなく駆り立てられるほどの強い何かがあったような気がするんだ。