エリさんは私と距離をとった。
サトルさんもそんな私を静かに見下ろしてきている。意識が直接的に向いていないのは、ハルナさんだけだった。
「美術、部に…」
「美術…」
ただ所属している部活を口にしただけだ。
それなのに二人は随分真剣な眼差しを向けてくる。
そんなに珍しいかな。なんて思って、「ハハ、地味ですよね」ちょっとヘラヘラしてみると、エリさんは「そんなことない」とすぐに否定してくれた。
「どんな絵描くの?」
「んーっと、風景画と…、ああ、それと人物画も」
「うわ、なんか、凄そうな雰囲気」
「ハハ、なんでですか。メインでは風景画を描いてるんですけど、最近は人物画も勉強してて。まだまだです」
そうだな…。
さっき降車していったミユちゃんのスケッチブックに描いた、ハルナさんの絵。
案外スラスラと鉛筆が進んだのは、人物画の知識もある程度は積んであるからだった。
