太陽の光をたっぷり浴びている田んぼ風景に目を向けながら、私は5月のページを捲る前に手帳を閉じて考えた。






成績ギリッギリで、志望校である公立高校に合格した私は、ろくに迷わず美術部に入ったっけ。

中学の時もまあまあ入賞していたけれど、まだまだ未熟だと思っていたために、只ならぬ野心を抱いていた。




高校生国際美術展。(こうこうび)。








……絵画をはじめた理由は、最初は単純に両親への労いの気持ちからだった。

それが本当に好きなものに変わり、次第に彼らだけでなく、身近な人へ…さらに広がってもっともっと多くの人を元気づけてあげられたらと、思うようになった。






私が生み出したものが、誰かの糧になればいい。それは私のやりがいに変わり、いつしか夢になっていた。




地域レベルではなく、もっと広く、もっと多くの人を感動させられるような、全国レベルの美術展に。

目標は入選…なんていう小さいものではなく、最高峰、ナンバーワンの、内閣総理大臣賞を取ること────。






放課後は、毎日夕方6時まで美術室にこもって絵を描いていた。無理だと言ってくる人もいた。

けれど、私は諦めなかった。やりきらなきゃいけなかったし、やりきりたかったんだ。



必死で。

想いをぶつけるようにキャンバスに色を重ねた。





あの時、私は────……、






「あの〜…」



その時だ。

隣から透き通った綺麗な声が聞こえて来た。