それにしても、高校生の頃、ね。

電車に揺られながら、私は幼少期、小学校時代、中学校時代までざっくりと振り返って来た。

なかなかこんな機会はないと思う。就活生がやる自己分析にちょっと似てる。まるで再確認したみたいに鮮明な記憶が頭の中に流れ込んで来た。

なーんにも変わらない、なーんにも考えない平凡な日常よりも、何倍も視界が明るくなった。






ぼんやりとそんなことを考えながら、ハルナさんを盗み見る。

前に、進まなきゃいけない……か。

目的地が分かっている、見え透いた未来行きの電車ではなく、不確かで進むのが怖いけれど人に大きな学びを与えてくれる…、そんな電車に乗らなくちゃ。




見え透いた未来。

機械化された現在はまさにそれだ。

いつ、何時に、何処で、何をするのか、なんてことは今の技術の進歩で言えば大方予想がつくし、知るには苦労はしない。

だけどそれで人は成長できるのだろうか。





考えを放棄しても難なく生活できる。



────もぬけの殻同然になる。



それは、"楽"とは違う。

虚無感、鬱積、閉鎖感、枯渇し、当てもなく同じ時間を彷徨っているだけ…。

私はそれを知っているし、ハルナさんの言う通り、本当の意味で前に進みたいと思ってる。






この線路を進むごとに、私が鮮明な色を持ってゆくように思えた。

……不思議。ごくありふれた日常が、ちょっとしたことでこんなに非日常になった。