新鹿沼駅を発車した"東武日光行き"は、様々な心を乗せて北上してゆく。
涙を完全に拭いきった私はというと、手帳を開いて4月の自分を振り返っていた。
────4月21日。月曜日。
"とってもカラフルなスペーシアを見た。断じて鉄道オタクではないけれど、珍しいフォルムをしてる電車を見るとつい気分が高まってしまう。なんだか唐突に日光に行きたくなった。だから思い切って誘ってみることにする"
東京と日光・鬼怒川方面をつなぐ東武鉄道の特急用100系列車の愛称で親しまれている、特急スペーシア。
日光線・東武日光駅発着の「けごん」と、鬼怒川線・鬼怒川温泉駅発着の「きぬ」で運行してる。
特急は料金が高くて使わなかったけれども、日光にはよく行っていたからか、こういった類のものにはつい思いを馳せてしまうのだ。
変かな?
うん。変かも。
やっぱり鉄道オタクなのかも。
ジョシコーセーが渋い趣味してるって笑われてしまうなあ。……なんて、もう一度手帳に視線を落とす。
……確か、何に何を誘ったんだっけ。
当時の自分の行動が思い出せないあたり、そんなに大したものじゃないとは思うのだけれど…。