帰りの会が終わってすぐに夏生が私の元に来た。

「ゆうあ、アイスー。」

子供がおもちゃを買ってもらえると知った時のような無邪気な笑顔で私が用意をするのを待っている。

「私はアイスじゃないよ。帰ろっか。」
「うん！」

ほんとに子供みたいな夏生。彼は私の手を取って走り出しそうな雰囲気だ。

「あっ、悠亜、夏生くん、じゃーねー。」

澪葉が私たちに気づいて声を掛けてくる。

「うん、じゃーね。また来週。」

クラスメイトからも何度か声をかけられるが夏生はそんな彼らにもちゃんと返事をする。ほんとに友達の多い子だなって思う。

「ねぇ、夏生。」
「んー？」
「お母さんがね、明日水族館に連れていってくれるみたいなの。一緒に行かない？夏生の予定がなければなんだけど。」
「え、行きたい。父さんにはLINEしとくからさ。」

おもちゃを買ってもらえると知った時のような笑顔ですぐさまお父さんに連絡し始めた。
夏生の家は３年前にお母さんが亡くなって、
今年、３歳になる稀衣（きい）とお父さんの３人暮し。家事とか稀衣ちゃんの面倒とかは夏生が率先してやっている。

「稀衣、大丈夫なの？」
「平気だよ。明日から連休じゃん？叔母さん来てくれるって父さん言ってたし。」
「そっか。お母さんに言っておくね。あっ、コンビニ着くよ。なに食べるか決まってる？」
「んー、多分。」