「ゆうあー」

前の席の椅子に逆に座っている彼の名前は九条 夏生(くじょう かい)は中学に入学してすぐに声をかけてくれた。それで次第によく話すようになってクリスマスの日に告白されて付き合っている。
夏生は同い年なのに甘えん坊で私、白波 悠亜(しらなみ ゆうあ)にすごく甘えてくる。なのに、男子だけの時とかは甘えん坊じゃないから友達に「白波といる時だけ甘えん坊だよね。」ってよく言われるみたい。

「なぁに?夏生。」
「帰りにさ、アイス食いたい。」
「いいよ。帰りにね。」

嬉しそうに柔らかく笑う夏生。私はそんな夏生の笑顔が好き。彼の柔らかい明るめの茶色の髪を撫でる。

「相変わらずラブラブね、2人は。」

後ろから私の長い髪を結ぼうとしてるのは小学校の頃からの友達、夏河 澪葉(なつかわ みおは)。

「澪葉。夏生が甘えん坊なだけですよ。」
「そう言いながら、悠亜だってそんな夏生くんに甘えさせてるじゃん。」

そう返されては私は何も言えない。だって本当のことだから。
私が黙っている間に、サイドで三つ編みして後ろにまとめ、結んでくれた澪葉。

「ありがとう。澪葉。」
「澪葉だ。あっ、悠亜がいつもより可愛くなってるー。」
「澪葉が結んでくれたの。」

恥ずかしいことを普通に声に出してしまう夏生。そんな素直なところも私が好きになった理由の一つ。

「夏生ー、ちょっと来いよ。」

前の方で固まってた男子のグループのひとりに声かけられて、

「行ってくる。」

と言って駆け足でそのグループに向かう夏生。

「悠亜、ほんと夏生くんのお姉ちゃんだよね。」

笑いながらそう言う澪葉。

「よく言われますよ。」

笑い返しながら他愛のない話を始めた。