妹の恋人[完]

たぶん、いらいらしている俺が怖かったんだと思う。

こんな風にカナコに避けられるのも、カナコが生まれてから初めてのことで、すごくショックで。

うまく動かない左手にゴムボールを握らせて、指を動かしてみる。

これもリハビリの一つで、常にボールを持ち歩くようになっていた。

暇さえあればボールをにぎにぎ。

全く動かなかった指が軽いゴムボールなら持っていられるようになったんだから、少しは進歩しているんだろう。

それでもやりたいことができないので、いらいらはする。

カナコに避けられるようになってから、学校も楽しくなくて。

いつかバスケット部に復帰することを信じていたけど、この頃には部活をやめることしか考えていなかった。 

顧問の先生に退部届をもらいに行ったら、あせらなくていいからと届をもらうこともできなくて。

やめることもできないんですか!って先生に八つ当たりしてしまった。

母さんとも話し合って、部活はいったん止めることにして。

いつかまた、運動ができるようになったら復帰すればいいのよ、と言われたけど、多分もう俺はバスケットをしないと思った。

今までのようにできないのなら、つらいだけだったから。

ワタルにもひきとめられたけど、あいつは俺の気持ちもわかってくれていて。

部活がない時は相手してくれよ!と別れた。