繁華街から少し離れた所にある小汚い雑居ビルの一角。
その一室。





男は長い足を組んでデスクの上に座っていた。


艶やかな黒髪をさらりと揺らしながら、彼はデスクの上にある煙草に手を伸ばした。
細長い指でそれを一本抜き取る。


「はい、火」


「サンキュ」


男は深く煙草を吸い込んで、にこりと微笑んだ。


「やっぱりオマエは気が利く」


「なに言ってんの?どんだけオマエの相棒やってると思う?高校ん時からだぜ?」


ライターを差し出した青年は蜂蜜色の柔らかそうな髪をワシャワシャと掻きながら男に顔を寄せる。


「オマエのことは何でもお見通しなの!」


そう言った直後、男がくわえていた煙草を口元から奪い、代わりに自分の唇で塞ぐ。


「……ん、煙草くせぇ」


「当たり前だってぇの」


「そうそう、忘れてた」


顔を離した蜂蜜色の髪の青年ははにかんだ笑みを見せながら一言告げた。


「客だよ、ボス」


彼がくいっ、と顎で示した事務所の入り口には、呆気にとられ、目を点にしている少年が一人。
僅かに顔を赤くして突っ立っていた……。






当たり前だろ、目の前で男共のキスシーンなんて見せられたら。
ねぇ、みなさん?