「ねぇ、最近思うんだけど」


唐突に口を開いたのはカヤノ。僕の姉。


「なに?」


「雨って、何かを連れてくると思わない?」


「は?なに言ってんの?」


読んでいた小説から顔を上げた僕の目には、窓の外に目をやる姉の横顔。


「雨が降ると、必ず何かが終わったり始まったりする気がする」


そう言って少しだけ唇に笑みを浮かべた姉の横顔は、綺麗だった。


ふわり、胸の奥が暖かくなったような、浮遊感を覚える。


「例えば何が?」


朝から降り出した雨は、正午を過ぎた間延びした時間でも相変わらずしとしとと降り続いていた。