「迷惑かけたのは俺だから、これぐらい当然だよ」


女の子たちから絶大な支持を集めてる理由が、ちょっと分かった気がする。


物腰が柔らかくて、雰囲気も穏やか。


おまけに、とても優しい。


本当、“癒しの王子様”っていう言葉がピッタリな男の子だな…。


心の中で頷いていると、紅月くんが私の手元を指差した。


「碧瀬さんの持ってるバッグ、中身はお弁当?」


「うん。今日は屋上でご飯を食べようと思って」


心待ちにしてた壱夜くんとのランチタイム。


急がなくちゃ…!


「それじゃあ、私はこれで…」


お辞儀をした後、背を向けた時…。


「………もしかして、黒河内と一緒に昼ご飯食べるの?」


先程よりも少し低くなった紅月くんの声が耳に届く。


振り向くと、笑顔が消えていて深刻そうな表情に変わっていた。


どうして、そこで壱夜くんの名前がピンポイントで出てくるの…?


不思議に思っていたのが顔に出ていたのか、紅月くんは苦笑した。