「王子……?」


確か、前にも…その言葉を耳にしたことがあった気が…。


「碧瀬さん、もしかして…王子のこと知らない?」


「う、うん…」


みるみるうちに、女の子たちは驚きの表情へと変わっていった。


「王子の校内認知度は100%だと思ってたのに」


「碧瀬さん、彼を知らないのはヤバいって!」


その男の子、相当な有名人なのか…。


そんなことすら、全く知らなかった。


苦笑いすると、一人の眼鏡をかけた女の子がコホンと咳払いをした。


「王子こと、紅月 玲音(あかつき れお)君。ハニーアッシュの髪はフワフワして綺麗で、目鼻立ちは完璧に整ってるし、身長も高くてスタイル抜群。中でも、彼の柔らかい笑顔は最強!心が癒されるの」


少し頬を赤く染めて話す姿を見て、周りの女の子たちも同意するように頷く。


「まさに“癒しの王子様”だよね」


「その上、スポーツも万能で頭もいい。非の打ちどころがないっていうのが、本当にカッコ良すぎる!」


テンションが一気に上がる女の子たち。


温度差を感じていると、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。