あとで、“ありがとう”って伝えよう。


きっと“そんなこと言われる筋合いない”とか言って、怒りそうだけど。


「思えば、壱夜が相手を思いやって起こす行動の殆どは、自分から遠ざけることだったんだよね。壁を作ることが最善なんだと思ってたんだろうな、今までは。でも、アイツ…少し変わった」


「えっ…」


「だって、さっきの言葉に壁は感じなかったから。むしろ莉彩ちゃんを守るために、相手に真正面から立ち向かっていったでしょ?あんな壱夜…初めて見たよ」


嬉しそうに目を細める神楽くん。


少し興奮気味な声で発せられた言葉は、私の鼓動を加速させた。


「アイツを変えてくれたのは、間違いなく莉彩ちゃんだよ…。ありがとう。引き続き壱夜を宜しくね!」


「うん…」


自然と笑みが零れる。


そんな風に言ってもらえて、嬉しいな…。


壱夜くんとの距離。


縮まったのは、ほんの少しなのかもしれない。


でも…


例え一歩だけだとしても、地道に積み重ねていけば、大きな前進に繫がるよね…。