「そう言えば、昨日…壱夜くんが、神楽くんに“物凄い剣幕で怒られた”って言ってたよ」


「さすがに、あの言い方は無いと思って頭にきたから久々に怒った。なるべく穏やかに済ませたかったけど、あの時は…無理だった」


「でも、壱夜くんと仲直りが出来たのは、神楽くんのおかげだよ。ありがとう」


私一人だけじゃ、こんなに早く壱夜くんと話せる状態に戻ってなかったから…。


「俺は、ただ感情的に怒っちまっただけだから、お礼言われるようなことしてないよ。さっき…壱夜から本音を聞いて、言い過ぎたな…って後悔してたところだし」


「本音…?」


「うん。おととい、屋上で“一切…俺に関わるな”って壱夜が言ってたでしょ?あれ、莉彩ちゃんを気遣って言ったことだったんだ」


「えっ…」


瞬きを繰り返す私に、神楽くんは柔らかい表情で頷く。


「“俺の近くにいると、碧瀬は周りから変な噂をされて孤立するかもしれない”って。“転校してきたばかりで、そんな環境にさせちまうのは辛いだろ”とも言ってたよ」


胸の奥が熱くなる。


あの言葉の裏側には…


優しい理由が隠されてたんだね…。