こ、怖かった……。


異様な威圧感から解放されて安心したせいか、体の力が一気に抜ける。


私は、ペタンとその場に座り込んでしまった。


もしも、抵抗むなしく不良たちに連れて行かれていたら、どうなっていたんだろう…なんて考えるだけでも背筋が凍りつく。


今、こうして私が胸を撫で下ろすことが出来るのも、ヨルさんが助けてくれたおかげ…。


お礼、言わなくちゃ…。


「……………」


無言のまま、私から離れてコンビニのドアを開けようとする彼。


「あ、あのっ……」


呼び止めると、ダルそうにゆっくりと振り向いた。


見とれてしまいそうなほどの端正な顔立ち。


目元にかかりそうな漆黒の前髪が、吹き抜ける冷たい風に揺れる。


「何?」


無表情ながらも、真っ直ぐ私を見る切れ長の目から、不良たちを睨んでいた時のような殺気が消えていた。