「ったく…教師に遠慮してんじゃねぇよ、バカ」


最後の“バカ”が強調されてたような…。


そ、それよりも…どうして壱夜くんが私の隣に座ってるの?


思いも寄らぬ状況にソワソワしていると、壱夜くんは私の教科書を荒々しく手にとった。


「あの、壱夜くん…!?」


「どこが分かんないわけ?」


「えっ…」


「まだ勉強してない範囲ってのは、どこからどこまでなのか…って聞いてんだよ」


不機嫌な顔で教科書のページを捲る壱夜くん。


それって、もしかして…


「勉強、教えてくれるの…?」


「雨が止むまでの単なる時間潰し。傘持ってきてねぇから、こんなに降ってたら帰れないし」


遠回りな言い方だけど、要するに勉強を一緒に見てくれるってことだよね?


次第に頬が緩んでいく。


「ありがとう、壱夜くん」


「くだらないこと言ってないで、早く俺の質問に答えろ」


「うん…!」


ギロリと睨む壱夜くんに笑顔で頷いた。