「壱夜くん…!?」


屋上の入り口に立つ彼の目は冷たくて。


鋭く放たれた視線に、私は肩をすくめた。


「壱夜、帰ってなかったのか?」


「担任に呼ばれて職員室にいた。教室に戻って来たら桃舞のバッグがあったから探してたんだよ。お前に貸してたノート、使いたいから返してもらいたくて」


不機嫌そうに溜め息を吐いた壱夜くんは、ツカツカと私の傍にやって来た。


「俺のこと、こそこそ嗅ぎまわんの…やめてくんない?ウザいんだけど」


「おい、壱夜!そんな言い方しなくてもいいだろ?莉彩ちゃんは、お前の噂を心配して……」


神楽くんの言葉を遮って、壱夜くんは淡々と話を続ける。


「桃舞から何聞いたか知らねぇけど、噂には事実も含まれてるから」


「えっ?」


「警官に職質されたこともあるし、不良の男に暴力振るって補導されたことだってある」


「ちょっと待てよ!あれは、正当防……」


「桃舞は黙ってろ」


語気を強めた壱夜くんに、神楽くんは苦しげに眉を寄せた。