「アイツには関わらない方がいい」


「だな。隣町に君臨してたグループの壊滅原因を作ったヤツだし」


「あのリーダー、この辺でかなり強かったのに“ヨル”に瞬殺されたらしいぜ?」


「うわ、ヤバすぎるだろ」


飛び交う不良たちの小声は物騒な言葉ばかり。


よく分からないけど、怖い人ってこと…?


重苦しい空気に包まれる中、体を小刻みに震わせていると、“ヨル”と呼ばれる男の子がこちらに向かって足早に近付いて来る。


そして、私の腕を掴んでいた男の手首を、強く掴んで引き剥がした。


「コソコソと話してる暇あったら、さっさと消えてくんない?目障りなんだけど」


涼しげな切れ長の目が不良たちを鋭く睨む。


途端に青ざめていく彼らの顔。


中には、ガクガクと震えている男もいる。


「か、帰ろうぜ…!」


「だな!」


不良たちは逃げるようにして、夜の暗闇へと呆気なく消えて行ってしまった。