「これに見覚えあるか?」


壱夜くんが制服のポケットから出したのは、ガラスボトルのストラップが付いているキーケースだった。


「このキーケースって、確か遊園地に出かけた時に壱夜くんが落としちゃって、探したものだよね?」


「ああ。この中に入ってるビーズ、莉彩から貰ったものなんだ」


「えっ!?」


「正確に言うと、もとはブレスレットだったんだ。でも成長するにつれて手首につけられなくなってさ。ビーズを繋いでた糸も磨耗してたから、ガラスボトルを買って中にビーズを詰めてストラップにしたんだ」


そう言えば、あの時…男の子にブレスレットを渡したっけ。


お母さんとはぐれて泣いてるのを見て、何とか元気づけたかったから。


そっか。


“買ったと言えば買ったし、貰ったと言えば貰った”


このストラップを私が初めて見た時に壱夜くんが言ってた言葉。


あの時はよく分からなかったけど、そういう意味だったんだ。


「いつでも見れるように、よく使うキーケースにつけた。こうして持っていたら、いつか彼女に会えるかもしれないって思ったのもあるけど」


キーケースを大事そうにポケットへとしまう壱夜くん。


私がプレゼントしたものを、ずっと持っていてくれたことが嬉しくて、心がジワリと温かくなった。