初恋のキミは最愛ヒーロー


「どうして、ここに…?」


「莉彩の姿が見当たらなくて探してたら、クラスの奴が校舎の方に走っていくのを見かけたって言ってたから…」


壱夜くんの視線が私のスクールバッグに向けられる。


「もしかして、帰ろうとしてる?」


私は無言で頷いて目を伏せた。


「後夜祭の時に話したいことがあるって言ったよな…?」


「きゅ、急用が出来たから帰らないといけなくて……」


「それ、本当に?」


「……うん」


「だったら、ちゃんと俺の目を見て言って?」


優しい声なのに、ビクッと肩が震える。


壱夜くん、私が嘘ついてることに気付いてる。


こういう時、上手く誤魔化せたらいいのにと思ってしまった。


「ご、ごめん…。話、後日じゃダメかな?」


「今日、話したい」


「……聞きたくない」


「なんで…?」


スッと伸びてきた壱夜くんの手を避けるように私は後退りをする。


肩からかけているバッグの紐をギュッと握りしめた。


「今の私は、壱夜くんの幸せを心から喜べないから。あの子と会っても、きっと笑顔でいられない」


「あの子…?」


壱夜くんの言葉にハッとして口をつぐんだ。