後夜祭、始まったみたい…。
しばらくして、遠くから何となく聞こえてきた生徒たちの声。
私は静かに耳を傾けながら、オレンジ色の空をボンヤリと見上げた。
少し落ち着いたことだし、このまま帰っちゃおうかな。
壱夜くんと約束したけど、急用が出来たっていうことにして、後で謝ればいいよね…。
私は帰り支度をして教室を出た。
今日は話を聞かずに済むけれど、結局は一時凌ぎ。
ずっと適当な理由をつけて逃げ続けるわけにもいかない。
壱夜くんが好きな人と付き合うことになったのなら、幸せを願わなくちゃ…。
「……はぁ…」
でも、話を聞きたくないってことは、心のどこかで両想いになれる可能性を完全に失いたくない自分がいるってことだ。
既に失恋しているくせに。
未練がましい女だな、私。
気持ちも切り替えられずにウジウジしてる奴、壱夜くんからしたら鬱陶しいよね。
ため息をこぼしながら、俯き加減で廊下をトボトボと歩いていた時。
「莉彩!」
聞き慣れた声で呼ばれ、弾かれたように顔を上げる。
昇降口の方から走ってくる壱夜くんの姿に、私は大きく目を見開いた。


