「それで、キミにお願いがあるんだけど」
「えっ?」
「俺たち、この高校の文化祭に来るの初めてでさ、教室の場所がよく分からないんだ。だから、案内してもらってもいい?」
在校生ならともかく、初めて学校に入る人は分かりにくいよね、きっと。
校内、結構広いし。
「分かりました。教室まで一緒に行きますね」
了承した途端、男性たちは嬉しそうに笑うと、そのうちの一人が私の背中に手を添えた。
「じゃあ、行こっか!」
「は、はい」
なんで背中に手が…?
支えてもらわなくても、ちゃんと歩けるんだけど…。
戸惑っていた時。
「アンタら、何してんの?」
低い声と共に、触れられていた手の感触が急になくなる。
振り向いた私の目に映ったのは、男の手を掴みながら怒りを露にしている壱夜くんだった。
「な、なんだよお前!俺たちはこの子に教室まで案内してもらおうと……」
「だったら、このチラシの裏に分かりやすい地図が載ってるから持って行け」
私が持っていたプラカードの裏のクリアケースからチラシを取り出して、男たちに荒々しく突きだした。


