「莉彩と主人が屋台から食べ物や飲み物を買って戻ってきた時に、主人に向かってキラキラした笑顔で言ってたのよ。“お母さんが無事に見つかって良かったね”って」


「あ……」


「花火は毎年同じ場所で見ていたから、主人が分からなくなるのは変だなって不思議に思ってたんだけど、きっと黒河内くんのことを言ってたのね」


胸が熱くなる。


あの頃から莉彩は、自分よりも他人のことを考えて行動するヤツだったんだな。


「今の黒河内くんの話、莉彩が聞いたらビックリするわね、きっと!」


莉彩のお母さんは、嬉しそうにコーヒーを口に運ぶ。


俺はソワソワしながら口を開いた。


「あの、俺が話したこと…莉彩さんには黙っておいてくれませんか?」


「えっ?」


「俺から直接伝えたいんです」


自分の声で、自分の言葉で。


感謝の気持ちと、“好き”の気持ちを。


「分かったわ。今日聞いたことは莉彩には内緒にしておくわね!」


「ありがとうございます」


ニコリと笑う莉彩のお母さんに頭を下げた。