「変なこと聞くんですけど、昔…莉彩さんのことを“サチ”って呼んだりはしてないですよね…?」
莉彩のお母さんはキョトンとした顔で固まっている。
やっぱり、そんなことあるわけないか。
「すみません。今のは聞かなかったことにして下さ……」
「そう言えば、そんな時期があったわ~!懐かしい!」
えっ…!?
何かを思い出したのか、莉彩のお母さんは声を弾ませる。
その反応に鼓動の波打つ速度が一気に上昇した。
「小学校に入学して二ヶ月ぐらい経った時だったかしら。クラスの女の子たちの間で渾名で呼ぶのが流行りだして、莉彩は“さち”って呼ばれてたの」
「どうして、その渾名に…」
「最初は“りさちゃん”って呼ばれてたのが“りさっち”に変わって、最終的にもっと短くなって“さち”って呼ばれるようになったのよ。莉彩も他の女の子のことを省略した名前で呼んでたわ」
そういうことだったのか…。
「莉彩、意外とその渾名を気に入っていたのよね。別の呼び方をされることに特別感を感じてたみたい」
莉彩のお母さんは当時のことを思い浮かべているのか、微笑ましそうにクスリと笑った。


