「乗れ」


もしかして、おんぶ…!?


「い、いいよ!歩けるから…!」


「今は大丈夫だったけど、また立ちくらみがあったら危ないだろ。歩いてる場所によっては大ケガする可能性だってあるし」


「でも……」


「だったら、無理にでも抱きかかえて帰るけど」


「えっ!?」


「それが嫌なら早く乗れ」


振り向いた壱夜くんは真剣な目で私を見つめる。


断るという選択肢は選べない雰囲気だ。


おんぶも恥ずかしいけど抱きかかえられるのは、もっと恥ずかしい。


そう思った私は、ゆっくりと壱夜くんの背中に体を預けた。


「よ、よろしくお願いします……」


「ああ」


壱夜くんは呟くように口にすると、立ち上がって歩き出した。


「重いでしょ…?」


「全然。っていうか、そんなこと心配しなくていいから、家に着くまで大人しく体を休めてろ」


「う、うん…」


そう言われても、この状況でリラックスするのは無理がある。


だって、壱夜くんにおんぶしてもらってるんだよ?


大きくて逞しい背中に、綺麗な首筋に、髪からフワリと漂う爽やかな香りに、ドキドキせずにはいられないから。