「ごめんね、迷惑かけて」


「具合が悪い時は誰だってあるんだから、謝ることなんてない。迷惑だなんて1ミリも思ってねぇよ」


「……」


壱夜くんは体調の悪い私を心配してくれてるだけ。


一緒に帰ってくれるのも家が近いから。


それ以外に理由はない。


特別に想ってくれてるわけじゃない。


壱夜くんには好きな人が、ちゃんといるんだから。


嬉しいはずの優しい言葉が、胸に突き刺さって痛かった。


「莉彩、寒気は?」


「少しあるけど、酷くないから大丈夫」


「喉乾いてないか?あそこに自販機あるけど何か飲み物買ってこようか?」


「ううん、平気」


優しく声を掛けてくれる壱夜くんに淡々と答える。


早く家に帰ろうと歩くスピードを上げた時だった。


「あっ…」


突然立ちくらみがして足元がふらつく。


転ばないように傍にあった電柱に手をついて体を支えていると、壱夜くんが私の目の前に後ろ向きで立った。


「壱夜くん……?」


意図が分からず固まっていると、壱夜くんはその場にしゃがんだ。