「キッカケは先週の日曜日の午後。その日、家には俺と父さんの二人しかいなくて、俺は自分の部屋にずっと籠ってた。でも、喉が乾いたから飲み物を取りにキッチンに行ったら、戸棚や引き出しを開けて首を傾げてる父さんがいたんだ」


「何かを探してたとか?」


玲音くんは、“そのとおり”と言わんばかりの表情で頷く。


「今までの俺なら、声をかけずにそのまま部屋に引き返すか、コンビニに飲み物を買いに出掛けてたと思うけど、その時は思いきって何を探してるのか聞いてみた」


「………」


私たちと友達になってまもない頃、“俺には何の関心もない”“別に会話したいとも思わない”って玲音くんが話していたことが何度かあった。


要するにお父さんに対する愚痴みたいなものだったんだけど。


壱夜くんも桃舞くんも、話が出る度に玲音くんの話を真剣に聞いていた。


もちろん、私も。


今の家がどれだけ居心地が悪くて辛いのかがすごく伝わってきていた。


だから、玲音くんから声を掛けたことには本当にビックリだった。